作業部日誌V3

        

ウチの1号機ものがたり【3】

cb_jwks-pu.jpg
▲ 今回復元した亀の子の足廻り(=『パワーユニット』)の塗装前の状態。もともとはフレームがキドマイティ仕様となりギア歯数も変更された1989年以降の改良再生産バージョンだが、復元機ということで、初期製品のステーがドロップ製のシリンダブロックとダイキャスト製の動輪押さえ板に交換し、モーターもあえてキャラメル型を装着した。


「すっきりと繊細で美しいボディーにレーシングカーなみの走り」
「チャーミングだけどペーパーウエイトにしかならない」


―このフレーズは、団栗さんのウェブサイトから引用させていただいたものだが、乗工社のキャラメルモーター搭載時代のPUシリーズの特質をじつに的確に言いあらわしている。

ミニランドシリーズも含めた、ポン引き氏言うところの“氷河期前”のJ社製品は、実車を忠実にスケールダウンした車輛がほとんど皆無といってよく、いずれも乗工社流とでもいうべきフィルタリングを経た独特のデザインにまとめ上げられている。
下廻りを中心としたパーツの共通化を織り込みつつ大胆にデフォルメを施しているが、線がシャープで決してオモチャっぽくはないし、実物特有の泥くささを絶妙にそぎ落としつつも、実車を特徴づけるポイントはしっかり押さえられている。そして何よりかわいい。30年前から“かわいいは正義”であると解っていたわけだ、倉持さんは(何かちがうような)。
いずれにしても、そのデザインの佳さに惹かれてHOナロー入門の扉を叩いた方も少なからぬことは想像に難くない。

しかし、その一方で“走り”の点では、かねてより随所で言われているように、決してほめられたものではなかった。
その原因はまず、低トルクでピーキーな上すぐに発熱してヘタレる、その名前とは裏腹にちっともスイーツ(笑)じゃないマブチのキャラメル型モーターに負うところが多い。

caramel_syugo1.jpg
▲我が家のキャラメルジャンクの山。確か左の方の4個くらいを亀の子一台で使い潰したように記憶している(クリックで拡大)。


減速比をたっぷり取ったボギー気動車の類や13tシェイ辺りはまだ良かったが、PUシリーズの場合、安定性の点で不利なモーター縦置きのレイアウト+高ギア比がネックとなる。
ギアの噛み合わせも固めで、キャラメルのトルクでは空回しをしてとことん慣らしをしないとスムースに回ってくれない。ところが材質がウォームも含めすべて同じ(真鍮)なのが災いし、モーターの取付角度が微妙に狂っているだけで、慣らしすぎor走らせすぎると第2動輪のギアとウォームがあっという間に磨耗する(後年、キドモーター仕様化と前後してギアは歯数が13枚から12枚に変更、材質も何度か変更されている)。
さらに、扱い方によってはプラ製フレームの材質がABS樹脂であることの弱点が完膚なきまでに露呈した。
鉄道模型の動力部分にプラスチック部品を用いる場合、その材質は、多くのNゲージの量産完成品にみられるようにポリアセタール樹脂(POM)であることが大半である。
POMは強度、弾性率、耐衝撃性、摺動特性に優れるため、フレームやギアに好適だが、一方、接着剤がマトモに効かず、エッジの立ったシャープな成型にも不向きという特徴を併せもつ。
おそらく、PUのフレームにABS樹脂を採用したのは、エンドビームや集電ブラシなどの接着加工や細密なM1.4ネジによるビス留めを多用する設計にPOMの特性が合わないことが理由のひとつであろう。ただ、そのおかげで、本来動力に求められる“耐久性”についてアキレス腱を抱えることになってしまった。

まず、モーター固定のための爪。ABSが弾性というか柔軟性に欠けるため、モーターの着脱を繰り返したり、あるいは最初の装着時であっても力のかけ方をしくじると、爪がいとも簡単に折れてしまう。
そして、フレームに切られた雌ネジのうち、動輪押さえ板や上・下廻りの固定に用いる部位が、メンテナンスのために繰り返し着脱をしていると、あっという間にネジ孔がバカになる。
さらに、耐薬品性にも劣るため、調子が悪いからといって浸透性の高い潤滑油をくれすぎると樹脂が劣化してクラックが入る。
結局、そうなってしまったら、基本的にはフレームを丸ごと交換してしまうしか手はないのである。

jwks_pu_torisetu.jpg
▲キャラメル時代の乗工社『パワーユニット』の組立説明書(クリックで拡大)

しかし、そのフレームもPUシリーズ発売からしばらくは、原則として単品での分売はされていなかった【※】はずだ。'81年当時の『製品案内』を見ても、PU関係の分売は、コンプリートキット状態の『パワーユニット』以外は集電ブラシとオプションのフランジレス中間動輪だけで、フレームのみの単品分売がおおっぴらに行われるようになったのは、フレームがキドマイティ仕様に改良されてから―それも恐らくは“氷河期”明け以降のことだったように記憶している【※】ただし、J社のつつじヶ丘のショールームや、同社と関係の深かった珊瑚模型店辺りでは入手できた可能性がある)
ゆえにフレーム交換と一口にいっても、パワーユニットのキットを新たに買うしかない時期があったはずだが、そのパワーユニット、亀の子のキットが4,800円の時代に3,000円もした。のちに分売されるようになったフレーム単品の価格は800円で、それはイモンに引き継がれた現在も変わらぬままだが、キット丸ごととなるとさすがに痛い出費である。それがネックで、フレーム破損の時点であっさり挫折し、場合によってはナローそのものから足を洗われてしまった方も少なくないのではないか。

さて、ずいぶんと前フリが長くなったが、ようやくウチの亀の話に移るとしよう。
キャラメル時代のPUは、モーターの特性ゆえ、適当に組んだのではどうしても“レーシングカーのような”走りになってしまう。しかしナローであるからにはスローの利いた走りにしたいのが人情なわけで、こちらとしては調整に躍起になるわけである。
不調に陥ったときのメンテナンスで真っ先に手が行くのは集電ブラシの清掃だが、第2動輪にブラシが当たる部分はキャブが邪魔をしてうまく清掃ができない。しかし亀の子の初期製品は、上・下回りの固定がフレームの内側からボイラーをネジ止めする構造になっているため、第2動輪のブラシ清掃をするには、動輪押さえ板を外してさらに動輪を外すしか手がなかった。すると必然的に押さえ板の脱着回数が増えて、すぐネジ孔がバカになる。その場合どうするか。瞬間接着剤(以下ACCと略)の出番である。

まあ、バカになったネジ孔を埋めるためにACCを使うのは、その場凌ぎの対処としてはあながち間違っていないとは思うのだが、問題は、当時の自分が経験不足なうえに不器用なクソガキだったということだ。
ACCをブチョっと多めに流し込んでしまい、押さえ板の周辺全体に接着剤が廻る。
なので、つぎに車輪を外すときには、押さえ板ごと無理やりドライバーの先でこじって引っぺがすハメになる。
気がつくとフレームと押さえ板双方にACCがテンコ盛りになっているので、そこをガリガリとヤスる。
再び組み付けてみたら却って車軸の摺動が悪くなり、また分解。
そして調整後押さえ板のネジ孔にはまたしてもACCをブチョっとな……もう悪循環のキワミである。
いっぽうモーターの方も、回しすぎて軸受が溶けた(!)り、ギアが引っ掛かった状態で電圧をかけすぎてコイルが焼損したり、コンミュテーターの溝に詰まったスラッジをケガキ針の先で落とそうとして誤って捲線を切ってしまったり…で何個もオシャカにした(ただ、キャラメルの唯一?良い点は当時でも一個400円と安価だったことだ)。当然、その際のつけたりはずしたりのおかげで、御多聞に漏れずフレームのツメが折れ、こちらでもモーター再固定のたびにACCのお出まし。
そんなことを繰り返しているうちに、フレーム廻りはいつの間にやらACCの分厚い膜に覆われたような悲惨な姿になり、挙句の果てには押さえ板は2つに割れ、フレームの前後もポッキリとヘシ折れてしまったのだった。

kame_front_zangai.jpg
▲折れてしまった亀の子の初代フレームのシリンダブロック廻りの残骸。その凄まじいACC漬け状態に我ながら呆れます(--;)

かようにしてわが亀の子は、購入から1年経つか経たないかのうちに廃車の危機を迎えてしまうのだが、このカマにまだ未練タラタラであった自分は、どっこい涙目になりつつも大枚3,000円を投じて新品のパワーユニットを購入し、下廻りの丸ごと更新を敢行したのである。
ただ、パワーユニットのキットにはエンドビームのパーツは含まれていないため、それを機に、フロントには珊瑚のダックスⅡ用カウキャチャーを、リアには角材から新製したビームを取り付けた。前後して、サドルタンクにも実車の写真や雑誌の作例の影響を受けて手スリ・サンドパイプ・ステップのディテールを追加し、外観も若干印象が変化している。

その後、わが亀はさらに数度の衣替えを経て今日までシブトク生き続けるのだが、次回はちょっと一休みということで、ダメになった初代フレームの行方について触れてみたい。


…まあ、ダメになったフレームがネタなぐらいですから、端的にいってひどいですよw

【2】にもどる
【3.5】へつづく
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  1. 2009/01/25(日) 22:54:47|
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  4. | コメント:7
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コメント

今回も笑いを堪えて読ませて頂きました。 
クソガキの心情が手に取るように解るってのがクソガキ時代に嵌ったジャンルの違いこそ有れ、お互い同じ様な事やってきたという証拠と言うか・・・(笑)

それにしても物持ち良いなぁ~。その点凄いわ!

良く考えたらPUをやった事無いッス!オイラ。
  1. 2009/01/26(月) 18:21:07 |
  2. URL |
  3. 牧場 #-
  4. [ 編集]

すさまじいですなあ

そのすさまじい試行錯誤?と出費と屍のうえに、今がある・・・というか、これが、あの時代のナローの関門だったわけだなあ、と懐かしく感じています。

さいわい、うちのはすべてオリジナルの構成で、なんとか生き延び、動態保存されております(^^;;;
  1. 2009/01/26(月) 22:50:02 |
  2. URL |
  3. skt48 #SFo5/nok
  4. [ 編集]

なんとかは1日して成らず、ですね

とことん手を動かす素養は
若き日からの試行錯誤の賜物でしょうね。
私はちょっと動かないとすぐにほっぽり出してしまいました。
でも、なぜか3000円のPUの箱があったりします。
久々に開けてみたら、キャラメルモーターが4個?
まったく記憶にないのですが・・・。
  1. 2009/01/27(火) 00:31:04 |
  2. URL |
  3. やまぎし #-
  4. [ 編集]

私も亀と沼サハがはじめでした。
77~78年頃に購入しましたが、あまりにも走らないのであれこれといじったものです。
モーターのコンミにエポキシを詰めて回転を滑らかにしたり、集電ブラシを上から擦るタイプに交換した際に先端にケーディーのスプリングを半分に切ったものを瞬間で固定して改善したりしました。
あの頃はまだ中坊でしたが、コンペグラフで家元と同じページに掲載されたのが、今となっては自慢です。現在の亀は3代目で最新モーター、ブラシで当時の苦労がウソのようです。
  1. 2009/01/27(火) 21:00:35 |
  2. URL |
  3. 三室 #37XHjqNI
  4. [ 編集]

今もかわらず

私はブラ板自作のダミーKATOでした(現存)。
今も変わらずKATO好き。
その後亀購入。モーターは取付板を介してTOMIXに換装。箱とともに現存します。
三室さん、パイクも当時と変わらずネコジャラシを植えてます。
  1. 2009/01/28(水) 00:27:31 |
  2. URL |
  3. 栗倉鉱業所長 #LezRqYSM
  4. [ 編集]

素晴らしい、素晴らしいが

こういう記事はPCのモニタ上じゃなくて紙に印刷されたもので読みたいよ。(EP2とかよ)
  1. 2009/01/28(水) 23:11:11 |
  2. URL |
  3. 元社員 #HuBhO90w
  4. [ 編集]

またまた亀レスですみません(月末なもので)

>牧場さん
牧場さんのクソガキ時代…想像ができん!(笑)
そのテッポーもシロウト目には接着剤のハミ出しがわからない出来だったりするにちがいないですきっと。

>skt48さん
まあなんというか往生際が悪いだけです、すみません(^^;)
しかし、オリジナルであの快調ぶりはスゴイ!

>やまぎしさん
私も元箱は後生大事にとっておくけど、中身はかなりデタラメに入れ替えてしまうタチなんで、今回発掘するのに苦労しました(^^;)

>三室さん
凝ったチューニングをなさってたんですね~。
ケーディーのスプリング利用は今でもやる価値あるかも…

>栗倉鉱業所長さん
家元も物持ちのよさは流石!ですね。TOMIXのモーター…型番忘れましたが、小判型で黒メッキ筐体(でも3極)のやつですか?

ちなみに、三室さんと家元が一緒に載ってるTMSは1981年1月号。あのコンペ入賞グラフを見て、トランク型パイクに憧れたのはおいらだけではないハズ(^^)
同号掲載の川上杜人さんの『麻績森林軌道』も名作!未読の方には激しくお勧めします。


>元社員さん
すいませんすいませんすいません。

まあぶっちゃけ今は紙に印刷されたものでやる余裕がないってのが正直なところであります…
かといって“老後の楽しみに”とか呑気なことも言っとれんご時世なのがなんともはや。
  1. 2009/01/30(金) 01:39:06 |
  2. URL |
  3. cjm #PBKNf/Mk
  4. [ 編集]

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