立て続けにレールの話題で恐縮だが、この機会に取り上げておきたいのが、12月にようやく国内入荷となった、英国・PECOの9mmナロー用“OO9”フレキシブルレールの新型、SL-404 “Narrow Gauge Mainline”である。
個人的には前から楽しみにしていた製品ということもあるが、今のところこのアイテムに関するウェブ上の日本語でのマトモな検索結果が数ヶ月前の
ポン引き氏の日記くらいしかないので、とりあえずこういう形で記録しておかないと…と思った次第で。

前のエントリで述べたレールヘッド形状に関しては概ね理想的といえるPECOフレキ。コードが高いことをさておいても、今までの経験から9mmナローで運転性能を重視する場合にはポイント含め最良の選択だと思っている。ただ、従来からあるタイプ(= SL-400)は、枕木の間隔や荒れ具合の表現が少々オーバーに過ぎる点が、日本型の軽便(林鉄の一級線含む)に用いるには少々鬱陶しいのが玉に瑕であった。
それに対し、品名のごとく“本線用”と銘打って枕木の形状・間隔を整えたバージョンがこのSL-404である。

▲上から篠原 HOn2-1/2フレキ(#60・全長500mm)/PECO-OO9 SL-404“Mainline”(#80・全長36in=914mm)/従来からのPECO-009 SL-400(同)。なおPECO-OO9線路の従来品は、“Mainline”タイプの発売に伴い、本国では“Crazy Track”と愛称が付けられた由。
既存製品との比較は上の画像の通り。
フレキの見てくれだけでいえば、日本型軽便にいちばん似合うのは篠原であろう。しかしゲージが広すぎる(カーブ敷設時のスラック確保を重視したのか、実測で9.5mmある)のと、その一方でポイントのフランジウェイが狭いことから、通過可能な車輪が限られる傾向があり、やや汎用性に欠けるきらいがある。ポイントがパイク利用前提の急カーブ“しか”ないのも不満だった。
その意味でSL-404は、篠原よりやや線が太めとはいえマトモな枕木の外観を備え、かつ線路としての造りは従来のOO9と同様だから安心して使える。
また、本国では
“Mainline”仕様のポイント(SL-E495<右>・SL-E496<左>)もすでにリリースされている。直線寸法は140mm位、分岐側の半径もR=457mmとゆったりしており、味噌汁軽便をスケール志向で楽しむのにもってこいである。
こちらもぜひ日本への早期入荷を望みたいところだ。
スポンサーサイト
- 2010/12/30(木) 12:41:59|
- 散財(模型)
-
| トラックバック:0
-
| コメント:5
久々のエントリのお題は、このたび発売された
ロクハンのZゲージ用線路である。
以前からの読者の皆様にはいまさら言うまでもないが、私はあくまで6.5mmゲージによるHOナロー(以下“乙”と略)のインフラや改造素材としてZゲージ製品を捉えている。そのため、レール関連の製品に対する評価は“短軸距の小型2軸動力車”がスムースに運転できるかどうかを重要視していることを予めご了承いただきたい。
ロクハンの線路は、6.5mmゲージの国産線路としては初めてポイントをラインナップした本格的システム線路であること、“乙”のお座敷運転にも好適な小半径のカーブ(R95)も用意されていることに以前から注目していたので、発売の報を聞きさっそくサンプル的に一通り入手してみた。
じつは、最初に店頭で現物を見て気になったのは、レールヘッドの幅が異様に広いことであったが、それにまつわる話については後述する。

▲とりあえず敷いて乙の車輛どもをテストランの図。
まずは、Zでは国産初となるポイントについて触れてみたい。
見かけの印象だけなら、Nゲージを含めた先行各社の道床式とさして変わらない。トングが板材のプレス成型で、スプリングの圧着が弱く指先で触れればカチャカチャと動くのも他社道床付と同様。ただ、トングとフログが導通している純粋な選択式のため、スプリングポイントとしては使えない(分岐側から突っ込むとショートして停止)。フログは金属の一体型のため、2軸動力車でスロットルを絞っても素直に通過してくれる。

問題なのは、分岐の直線側に別のレールを繋ぐ場合は、道床の干渉する部位を
トリセツ見ながら適当に現物合せで切除しなければならないことだ。
道床幅を広くとった線路で分岐先の寸法が短いポイントの場合は当然起こる現象であり、(他スケールを含む)他社製品では、ポイント本体ないしは付属の線路の道床に最初から切れ込みが設けられているのが常である。
工作慣れした人には大した手間ではないが、製品の性格からしてそういう工作自体が不得手なユーザーも少なくない筈であり、そもそもパッと繋いでスグ遊べないのは“お座敷”用としては少々考えモノである。

最初から電動のマシンが仕込まれているのはよいが、小規模なお座敷運転にはコードが邪魔。しかし裏蓋を開けてみると自在に付け外しできる構造にはなっておらず、電動で使う気がないのなら潔くコードをチョン切るしかなさそうだ。
ポイントのコードのソケットは一見KATOのと似ているものの、独自の形状であり互換性は無い。
また、線路に電気を供給するフィーダーは発売が遅れたため当方未入手だが、これもソケットに関してはメーカーサイトの画像を見る限り独自形状のようだ。
ただ、フィーダーに関してはプラスアップ製がほぼそのまま使える(道床への挿し込みがユルいので、適当な紙片などスペーサを噛ます必要あり)。こちらはKATOと同じソケットなので、すでにKATO製の電源をお持ちであれば手間はかからない。
…とまあ、どちらかといえば文句の方が多くなってしまったけれど、Zの電動ポイントが約2,000円という手ごろな価格で一般流通が実現したのは、6.5mmゲージを楽しむファンにとって大変意義深く且つありがたいことである。
次に、最初に述べたレールヘッドの異様な広さの件に移ろう。
幅が広いこと自体は、運転の機能を確保するうえで何がしかの理由があるならむやみに謗られるべきことではないが、外観の実感味の点では気になるのも事実である。
そこでフト思い立ち、手許にあるZ・Nゲージ用の線路についてひととおりレールヘッド幅を比較してみることにした。
下がその結果である。ただしアナログなノギスによる最低0.05mm単位の実測値であることをお断りしておく。

果たして、ロクハンは9mm・6.5mmゲージ用のレールとしては最大のヘッド幅を誇り(!)、それのみならず舶来のZゲージ用レール-メルクリンミニクラブ、PECOフレキも他のN用より却って広く寸法が取られているという興味深い事実が判明した。
じつは、ロクハン線路のヘッドが広いことについては、メーカー公式サイトに
いちおう理由が説明されている。曰く、動力車のゴムタイヤのトラクション向上のためであるという。
ロクハン、ミニクラブ、PECO(Z)のレールヘッド幅は、車輛の絶対的な質量が小さく動力車のウェイトが稼げないことからゴムタイヤの効果を重視した結果…ということなのだろうか。
ただ、スムースな運転のためには、動力車のパワーに頼るだけでなく、トレーラーの転がり抵抗を低く抑えることも肝要である。そう書くと、車輛の転がりの良し悪しだけに関心が行きがちだが、車輪自体の形状やレールヘッドの形状もひじょうに重要なファクターなのだ。
レールヘッドの形については、本来微妙に丸くなっていることが理想であるが、模型用線路の大半はそうはなっていない。現に、上の表で取り上げた線路はすべてヘッドが平らであり、完全に丸いものの例としてパッと思い浮かぶのは、ライオネルのチューブラー・トラックやPECO-OO9線路の初期製品くらいである。
少なくとも、集電性についていえばヘッドは丸い方が良い(動力車の集電ブラシが、断面の丸い線材や球状の突起で車輪を擦る方式が優れているのも同様である)。
ただ、上面が平らではあっても、肩の部分に丸みがついていれば、集電はいくらかマシになるし、カーブ通過時に車輪の
フィレットが当たっても摩擦が軽減され、挙動がスムースになる。カーブを敷く際に大げさにスラックを設ける必要も少なくなる。
上の表では、ヘッドの肩形状についても大まかに3種類に分けて付記した。それを図で表した場合は以下のようになる。

この中で、Nゲージ用として圧倒的にユーザーが多いのはトミックスとKATOユニトラックであり、Zゲージに関しても国内では今後ロクハンが主流になるであろう。しかし、それらが一様にレールヘッドの肩が角張っているのはいかがなものか…と個人的には感じた。
あと、篠原のHOn2-1/2用#60は、フレキとスナップトラック(ポイント含む)ではレールが別物だということがわかる。両者は枕木の樹脂も微妙に違っており、フレキの方がレール、枕木とも曲げに対して粘りのある材質となっている。

▲左から、ロクハン/マイクロトレインズ/メルクリンミニクラブ/プリムトラック/リアルトラックス<以上6.5mm>、トミックス ファイントラック/PECO-OO9(SL-400)<以上9mm>
ついでに、そこいらのN・Z用車輪にフィレットが設けられているかどうかの一覧もお目にかけよう。なお、フィレット有(=○印)としたものも個々の製品を見比べるとみな微妙に異なるが、その部分の設計が適正であるかどうかについてはとりあえず言及しないでおく(まあ言及するだけの充分な知見もないのだけど…)。

こうやって較べてみると、集電や牽引力の点で不利なナローの小型車輛をスムーズに走らせるための理想的な線路と車輪の組み合わせは、おのずと見えてくると思う。
6.5mmゲージ用では、レール形状に関してはプラスアップ製のものが大健闘である。道床の見てくれも、設計者の無理解ゆえかトミックスのN用をそのままトレスしたと思しき枕木間隔が“乙”にはむしろ好都合(笑)でもあったり。ただしメーカーが事実上フェイドアウトしつつあり、残念ながら今後の供給は期待できない。
そうなると、基本的にはロクハンや舶来各社の製品相手にうまく付き合ってゆくしかない。
さて、だいぶ遠回りしたが、ロクハン線路のインプレッションに戻ろう。
ポイントの通過性は先に述べたとおり特段問題はない。しかし、手許のクラフト動力(WB12-6.5)5台をひととおり走らせてみたところ、新品で殆ど走らせていない1台(春先に購入したKATO3.5tキットの同梱品)を除き、微妙な集電不良に因ると思しき起動のモタつきが時々生じた。レールをクリーニング液(GOO-GONE)を染ませた棒でざっと拭いてみてもあまり改善しなかったので車輛の方を点検してみたら、おしなべて集電ブラシと車輪裏側の間に汚れが溜まっている。それをクリーニング後にリトライしたところ、さしあたり問題は改善された。
ただ、車輛側のメンテ頻度が上がるのも考えものだし、そもそもそれら4台はテスト直前までプラスアップの線路では何の問題もなく動いていたのだから、やはり“絶壁ヘッド”は多少影響しているとみてよい。
とりあえずは、ゲージ内側のレールヘッド肩をペーパー掛けして丸めてやるのが有効な自衛策だろうか?
…と疑問形にしたのは、まだ手が回らず試せていないためだが、これについてはトミックスやユニトラックでもテストしてみる価値はありそうだ。
本音を申せば、メーカーの製品が最初からそうなってくれればそれに越したことはないのだが。
- 2010/12/30(木) 12:35:33|
- 散財(模型)
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0